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森のミュージアムの最新情報<研究ノート>を分離


by morristokenji

「自然エネルギー」モリスと賢治(1)

** 「自然エネルギー」のテーマで原稿の依頼があり、モリスと賢治の環境芸術の視点で論点を提起したいと思います。

(1)コッツウォールズの自然エネルギー
 NHK・BSハイビジョンで「世界で一番美しい村」と紹介された英・コッツウォールズ、日本からのイギリス観光旅行では、湖水地方やシェクスピアの郷などとともに、ツアーのコースに必ず入る景勝地だ。丘陵や小川の美しい自然とともに、英・ガーデニングのメツカともなっている。広大なマナー・ガーデンから村の農家や住宅の庭づくりまで、ガーデニングの尽きない魅力を尋ねて、観光客が日本からも沢山訪れている。
 「世界で一番美しい村」の魅力は、ガーデニングなど自然の美しさだけではない。自然の美しさが地域の歴史や産業に根ざしているところにある。07年6月、旅行会社の紹介で宿泊した朝食つきの英国風民宿、BBは中規模のガーデニングと共に、数室の寝室が用意されていた。名前はミル・ディーン・ガーデン、このミルだが、言うまでもない水車(小屋)の意味だ。水車小屋で粉を挽き、綿やシルクを紡ぐ。洗面所の鏡の隣には、1815年10月24日(火)の日付けが入った書付が、額入りで飾ってあった。
 200年も昔、水車で製粉や紡績を営んでいた、その工場の建物が、そのまま水力を活用、ガーデニングや観光宿泊に利用されている。翌日、ここの女主人の指示に従って、BSハイビジョンでも紹介していたギルドを訪れた。このギルドは、1902年にロンドンから移築されたもので、親子3代の職人が銀器の製造と販売をしている。NHKは放送しなかったが、中世のギルドとは違って、さらに女性の職人も働く、男女共同参画型のギルドなのだ。
 コッツウォールズとは「羊の丘」の意味があるらしい。自然エネルギーの水力を中心に、羊毛・毛織物工業の生産と出荷で栄えた地域だ。今も草原で羊が遊び、牧羊が地力を支え、その地力がまた英・ガーデニングの美しいバラを咲かせている。自然エネルギーこそが、英・観光産業の発展のエネルギーであることを見逃すべきではない。
ガーデニングでは、バラなど美しい草花だけに興味が集中する。しかし、コッウォールズのガーデンは、キッチンガーデンが不可欠なのだ。マナー・ハウスも、ホテルの食事の野菜は、キッチンガーデン自家製であり、地産地消そのものだ。村のコミュニティは、野菜などの物々交換の共生社会であり、そこに「世界で一番美しい村」の秘密があるのではないか?
by morristokenji | 2010-01-11 12:56