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by morristokenji

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 また、3・11がやってきた。東日本大震災から4年の歳月が流れ去りました。

 地震、津波、そして福島第一原発事故、三つの災害が重なり「複合震災」とも呼ばれます。明治、昭和、それに平成と続いた巨大津波の常襲地帯から見れば、2011年(平成24)の複合震災は、とりわけ福島第一原発事故が重なった点を無視することはできません。米・スリーマイル島、そして旧ソ連のチェルノブイリの原発事故に続き、東日本大震災により原発の「安全神話」が完全に崩壊した。地震や津波による犠牲や被害に加えて、放射能汚染による災害の量と質を見逃すわけには行かない筈です。米国、ソ連、そして日本の三大先進国に起こった原発事故こそ、現代科学技術の最先端による自然災害の極点であり、まさしく究極の大規模「複合災害」でしょう。今、人類は深刻に近代文明の転換を迫られている!

 3・11から3日遅れて3月14日、仙台市では「国連防災世界会議」が仙台国際センター展示棟を中心に開催されました。国際的な防災の行動指針を決める第三回の世界会議であり、仙台市での開催もまた、3・11東日本大震災の被災地だったからです。開会式には、天皇、皇后両陛下の出席、さらに首脳級を含め186カ国・地域からの参加があり、国内開催の国際会議としては過去最大規模の会議です。藩基文国連事務総長は「災害の被害は毎年300億ドルに上る。災害リスク軽減に全力で取り組み、世界を安全で安心にしよう」と呼びかけました。
 それに応える安倍首相の演説が問題です。地元紙「河北新報」は、一段小さい活字ながら「原発事故に踏み込まず」との見出しで、こう伝えました。「東日本震災の被害を深刻化させた東京電力福島第一原発事故には一言触れただけだった。政府は原発の再稼動や海外輸出を推進しており、踏み込んだ言及で原発に関心が集まることは避けたかったようだ。<東日本大震災と原発事故を踏まえ、長期的視点に立って、更なる防災投資に取り組む。>100カ国以上の首脳、閣僚級らを前に演説した首相が、原発事故に触れたのはこのくだりだけだった。汚染水漏れが続く事故の現状や、原子力防災のための具体策の説明は一切なかった。」
 さらに河北新報は、こう述べています。「会議では、自然災害と原発事故などが同時に起きる<複合災害>
対策も話し合われるが、主要議題とはなっていない。原発再稼動をめぐっては日本国内でも世論が二分している状況。原発問題に関し、日本政府関係者は<首相は過敏になっている。国民の意識を探っている>と指摘し、発言に慎重になっていることを明かした。」事実、国連防災会議では、原発事故は片隅の小さいセッションで取り上げられ議論されたものの、メインの議論にはならず、完全に期待はずれなものに終わったようです。
 しかし、海外からの参加者は、原発事故とともに被災地の状況にも関心が強く、河北新報だけでなく、例えば「日経紙」の東北版でも、「海外参加者 現場へ」の見出しで、東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)へのドイツなどからの公式視察を伝えました。そこでは、耐震化の現場の視察とともに、参加者から「周辺住民や原発所員の安全対策」に関心が寄せられたこと、また「原発事故 東北に学ぶ」として、福島県浜通り地区の復興への点検ツアー参加の様子も紹介されました。放射性物質による水産物の輸出問題など、事故後の取り組みがアピールされたものの、参加者の感想として「ただ、今回の防災会議ではじっくり原発問題を討議する空気は薄い」と不満を込めて締めくくっています。

 原発事故には「一言だけ」、もっぱら「防災投資」のばら撒きによるアベノミクスが強調される安倍政権の姿勢が強まってきました。「災後4年」、一方では官尊民卑ともいえる公共事業の復興優先は、防潮堤など一部を除いて、復興集中期間に完成に近づける。しかし同時に他方、公共優先の煽りを食って、人手や資材の不足と高騰で、民間の住宅建設などは大幅に遅れている。こうした官尊民卑型の震災復興の矛盾集中こそ、今なお避難住民が全国で22万8863人に上り、被災3県の仮設住宅には6万9千所帯が住み続け、仮設住民の高齢化や健康悪化が進んでいる現実です。宮城県では高齢化率(65歳以上)が43.8%、独居世帯も2割を超え、住民の職業は無職が最大で36.9%にのぼり、このままでは「孤独死」を待つほかなくなっています。
 原因の一つが、災害公営住宅の供給の遅れであり、完成はまだ2割にも届かない。また、雇用の場を保障する産業の復興も遅れ、企業の6割が低迷を脱出できないまま、とくに高齢者の雇用の拡大には手を出せずにいる。公共事業で道路や鉄道、生活インフラの復旧が進んでも、仮設住宅から被災住民の多くは抜け出せぬまま、地域全体の衰退と崩壊が進んでいるのです。ただでさえ少子高齢化で多くの自治体が消滅の危機を迎えようとしていますが、被災三県の沿岸37市町村のうち、9割を超える34市町村の人口が震災前を下回っています。増加の3つは、仙台市および隣接の名取市、利府町、それも4年間にいずれも4%の増加に過ぎませんが、言うまでもなく周辺の被災者難民の流入による増加でしょう。
 この被災自治体の人口減で特に注目しなければならないのは、宮城県女川町の人口減少です。関係の37市町村のうち、最大幅の減少率で28.9%、震災前より3000人近くの減少です。JR石巻線が全面復旧し、新しい駅舎が完成し、コンパクト・シティの模範のような商店街や公的施設が整備、公営住宅も供給されています。にもかかわらず最大の人口減少率は、一体何を物語るのか。河北新報は、「約20メートルの津波で中心部は壊滅し、町外へ移転した住民が多い。最大の津波被災地となった石巻市も1万3000人減少した」と述べています。しかし、津波の被害だけなら、ほかの市町村も同じです。本当の理由は、福島第一原発に隣接の第二原発とほぼ同様の被災だった「女川原発」の存在であり、その女川原発の2号機の再稼動が進められている。原発再稼働への具体的動きが、女川の大幅な人口減の本当の原因ではないのか?さらに指摘すれば、現在まだ住民票を移さないままの住民が、福島原発の関連市町村でどこまで転出に踏み切るか、それらを考えると被災地自治体の存亡の危機が、日一日と深刻化せざるを得ないのです。被災地が切り捨てられ、核のゴミ捨て場にならざるを得ない厳しい現実こそ、今度の仙台市での国連防災国際会議が論じなければならなかった大きな論点ではないでしょうか。

 福島第一原発は、どこへ行くのか?災後4年の被災地の現実は、事故処理の見通しも立たぬまま、住民は絶望の淵に立たされた深刻な様相を呈しています。主要な点を列挙してみます。
 ①2011年12月16日の冷温停止宣言は、事故収束を意味するものではない:事故原因が未解明なまま原発再稼動に向けての準備が進められ、再稼動のための「規制基準」(「安全基準」ではない)が設けられ、再稼動の申請がいま続出している。
 ②隠蔽された汚染水の流出:拡散され続ける放射能汚染水の完全処理は可能なのか?すでに2兆ベクトルを超えるといわれる海への汚染水が流出している。
 ③福島第一原発の廃炉作業は手付かず:4号機の使用済み核燃料の取り出しのみで、1~3号機の廃炉は未着手で今後の展望なし。
 ④最終処理場がないまま、中間貯蔵施設への汚染廃棄物の搬入強行(トイレ無ききマンション建設):県下全域に拡大する土砂砕石業者の不法投棄の横行と県外への拡大。
 ⑤国・東京電力の営業損害賠償の打ち切り策動:福島の商工業者は猛反発しているが、さらに被災住民への賠償の行方も不透明?
 ⑥ポスト「集中復興期間」(2016年度以降)への対応も不透明:自治体と住民への自己負担のしわ寄せが進む可能性は大?

 国内では原発再稼動を進め、対外的には原発の輸出(抱き合わせに核廃棄物の輸出、瀕死の「核燃料サイクル構想」、非核三原則・武器輸出三原則の事実上の放棄?)推進が図られる。就任以来、財界首脳を引き連れての地球規模での安倍「トップセールス」は、すでに中東4カ国訪問によって、「イスラム国」とは開戦をもたらしています。その点では、もはや「戦時経済モード」への転換完了とも言えるでしょう。そうした陰に隠されはじめた福島第一原発の悲劇に対して、一体いま誰が、誰の責任で、被災地の救済と解決の手を差し伸べたらいいのか、東北人に課せられた重い責任を感じています。
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by morristokenji | 2015-03-17 21:16