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by morristokenji

沖縄知事選が提起したもの:沖縄独立問題ー突風「解散・総選挙」で問われている課題

 解散権の行使に「大義」がありや否やを問うても仕方がない話ですが、あまりにも唐突な解散であることに間違いはないでしょう。そして、消費税再増税の一年半延期を含めて、自民党安倍政権に対する信認が問われている。選挙により安倍退陣に追い込めるか否か、そこに今回の選挙の争点があると思います。
 安倍総理の頭の中では、早くから解散権を行使し、支持率が高く、与党絶対多数を維持しながら、安部政権の長期化を考えていたようです。しかし、内閣改造で女性大臣の多数起用が裏目に出て2人も同時辞任、さらに政治とカネの問題が再燃し始めた、慌てて解散総選挙を前倒しにした理由でしょう。消費税再増税だけなら、もう少し解散を先に延ばす選択もあったはずです。しかし「突風解散」を決断したについては、さらに思わぬ誤算のマイナス要因が2点浮上しているように思われます。
 第一は、今年7-9月のGDP速報がマイナス1.6%(年率)となった。事前の予想は、プラス2~4%だったのが、マイナスであり、しかも1.6%も落ち込むという想定外のデフレ現象となった。投票前後に発表の確定値は、さらに悪い数字が予想されていてデフレ脱却の好循環どころか、デフレ深化の悪循環になっている。消費税再増税の是非どころか、アベノミクスそのものが選挙の争点になってしまった。アベノミクスが争点の選挙となれば、安部政権そのものが問われることになり、自民の議席が大幅に減れば、安倍退陣の可能性も大きくなった。
 アベノミクスについては、当初から理論上も、政策的にも、その誤りを本「持論時論」でも繰り返し提起してきました。とくに「第3の矢」と呼ばれる成長戦略は、日本経済だけでなく先進国全体が成長力を喪失しまっている。工業化社会の大量生産・大量販売・大量消費による高投資・高蓄積の活力は存在しなくなった。すでに存在しなくなった成長力を追い求め、「坂の上の雲」を幻想に描いて、成長の矢を乱射する。メクラ滅法に打ちまくっても、空鉄砲でマスコミの雑音が響くだけ、実体経済の投資も消費もいっこうに反応しないのです。それに消費増税が加われば、GDPが大きくダウンするのは当然です。さらに誘導した円安は、輸出拡大どころか輸入物価の急激な大幅上昇で中小企業や家計を苦境に追い込んだ。
 第一と第二の矢は、財政と金融のマネタリーの矢ですが、第三の成長戦略の実体経済に結びつかなければ、たんなるカネのばら撒きとバブル拡大に終わるだけ。財政については、すでに戦時経済を上回るほどの借金財政、赤字国債の引き受けで金融の「異次元緩和」を拡大し続けても、いくら超低金利とはいえ国債の利子支払いや償還はしなければならない。そのための消費増税が無ければ財政も金融も維持できない。「持続可能」どころか、「持続不可能」なマネタリー・システムの異次元緩和によって、日本経済は破産に追い込まれる。アベノミクスとともに日本経済の破滅が目の前に近づいてきているのです。消費税の再増税が実現する前に、日本経済の死滅が待っている、そんな危機感に駆られます。GDPマイナス1.6%は、安倍退陣へのレッドカードだと思います。安倍と日銀・黒田の蜜月もいよいよ怪しくなっている。
 第二は、11月18日の解散・総選挙の表明のわずか2日前の沖縄知事選の結果です。自民・次世代が推薦の現職の仲井候補の苦戦は予想されていたとはいえ、前沖縄市長の翁長雄志が10万票近い大差をつけて36万820票、得票率でも50%以上も獲得するとは予想しなかった。自民の大敗北であり、名護市長と沖縄県知事が揃って、真っ向から普天間基地の辺野古移への移設にノーを突き付けたのです。これでは鳩山由紀夫元首相の県外移設の迷走の時点に舞戻ってしまった。消費税アップもできない、基地移設もできない、何もできない「安倍一強内閣」です。強引に進めてきた集団的自衛権の行使も、とくに米軍とのガイドラインの見直しは、沖縄の基地問題の行方が不透明では進めようがない。日米の話し合いも延期だそうです。
 沖縄知事選の最中に、翁長知事の実現を阻止する一種の選挙妨害でしょうが、こんなインターネット上に怪情報が海外から流れてきました。

 まず、翁長氏が「安保破棄中央実行委員会」で演説する「日米安保破棄論者」であること。
 次に基地問題です。「国土面積0.6%の沖縄に全国の74%の米軍専用施設が集中している」が、これは差別ではない。日米安保によるもので、対中戦略である。
 なぜ、対中戦略が沖縄への基地集中か?それは中国のいわゆる「第一列島線」に台湾、九州とともに沖縄が入っているからだ。<この辺がおかしいので、台湾、フィリッピン、ボルネオとともに沖縄も入っているのに、なぜ沖縄に集中するか?やはり差別でしょう。大内>
 この後の論理は、嫌中・価値観外交イデオロギー丸だしで、中国は「沖縄を本来は自国領」として尖閣同様に狙っている。日米安保、沖縄基地のお蔭で中国領に入らずに済んでいる。
 その上で、ポッダム宣言、カイロ宣言を持ち出し、日本の無条件降伏から領土問題を論じ、中国に沖縄領有権が無いことを主張しています。<この論点は、歴史修正主義にも関連し、日本の無条件降伏による米軍を中心とする連合国の占領政策、そしてサンフランシスコ片面講和などの平和条約、さらに安保条約そのものにも再検討を迫ることになりかねない。アメリカは嫌がり強く「不快感」を表明し、再検討は不可能です。大内>
 最後に、沖縄の基地問題の解決の道は 
 ①日本の中で負担軽減を目指す。
 ②沖縄が独立する。
 ③中国に併合される。
しかし、②は③に帰着するだけで、①しかない。にもかかわらず今度の選挙結果は、翁長知事実現で県民は②を選択した。

 ざっとこんな論調です。①はこの間、さんざん議論し、努力もしてきた。しかし見通しがないまま、沖縄県民は②につながる翁長知事の誕生を選択したのです。こうした沖縄の選択は、英スコットランドの独立、スペインのカタロニアをはじめ世界的に広がる地域の独立、つまり近代国民国家の統合力の弛緩、喪失を意味すると思います。東北独立とも無関係ではない点を指摘しておきます。
 いずれにせよ今度の総選挙は、アベノミクスの評価だけではない、「歴史修正主義」に対する評価も含んでいる点をお忘れなく。  
 
by morristokenji | 2014-11-20 09:48